両親から受け継いだもの(2)
母からは、父よりももっと現実に即したことを教わりました。
その内容は、私の中で、今でも生きていることばかりです。
母は、小さい頃、ピアノを習ってみたかったけれど、母の父(私の祖父)が音楽を嫌いで、ピアノなんてとんでもない、という人だったので、ピアノに憧れがあったようです。
それで、私が小さい頃、家にあった電子オルガンで、バイエルなどを練習していましたが、結局忙しくなって諦めてしまったようです。
また、小学校の頃、熱心な音楽の先生がいて、なぜかその先生に気に入られて校内の合唱団に誘われて入って、その先生のつてで、NHKのスタジオで越路吹雪さんが収録をしているところを、合唱団の皆で見学させてもらったという話を、よほどインパクトがあったらしく、何度もしていました。
そんなわけで、ほとんど音楽に関しては素人なのですが、感覚は鋭く、コンクールなどでは、他の人の演奏を全て聴き、私の演奏に足りない根本的な点をずばっと言い、それを直すと曲がもっと生きて、聴き映えがする、という経験を何度もしました。
自分の子どもの演奏でも、冷静に聴いていて、その鋭い視点は、その後の私が、いつでも物事の本質をとらえたいと思うようになる大きなきっかけになりました。
入賞した国際コンクールには全て、母が一緒に来てくれたのですが、感情の起伏の激しい私の精神安定のためにどれほど有難かったか分かりません。常に冷静に物事を見、与えられた状況にすぐ順応できる母は、私とは正反対で、本当に頼りになる存在でした(この点はもう少し、受け継ぎたかったです…)。
他にも、人間関係に悩んだ時や、どうするべきか分からなくなった時、母は冷静に、とるべき道を教えてくれました。
母は、今は高齢になり、コンクールのことだけでなく、色んなことを忘れてしまっていますが、今でも、何かを相談すると、本質をとらえたアドバイスをズバッと言ってくれるので、一瞬、昔に戻ったのかなと思うほどです。
ということはつまり、母の本質的な部分なのだろうなと思います。
私の物の見方は、クリスチャンである父の考え方と、母(同じくクリスチャンですが)の冷静で全体から本質をとらえようとする物の見方に大きく影響を受けていると思います(私自身は、クリスチャンではありませんが)。
若い頃は、ピンとこなかったところも、年を経て見えてくるようになり、両親が教えてくれたことが、とても素晴らしくかけがえのないものだったと分かるようになりました。
もちろん、両親も人間であり、聖人でもないのに、どこかそうであってほしいという願望が強くなりすぎてしまっていたのでしょう、私は若い頃反発や葛藤があり、色々ありましたが、今は、このようにたくさんのことを私達子どもに与えてくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
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