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「あがり」を克服する(4)

曲をどう弾くかイメージを固めるのに、私がしていることは、

まずその曲をどんな雰囲気で弾きたいのか考えることです。

例えば、ブラームスなら重厚な感じとか、北ドイツの風景や

知っている知識などを思い出し、そこから受ける印象などを

参考にします。


その後、その雰囲気を思い浮かべつつ、曲を構成するすべての

メロディー(フレーズ)はどのように始まり、どこでどのように

終わるのか、まず分析します。

分析といっても、難しく考える必要はないです。

歌ってみると、意外とシンプルに分かる場合が多いです。

この音は、どこに向かっているのかと、一つ一つ吟味していくのです。


吟味していく時のヒントになればと思うのですが、

例えば文章をスピーチする時には、起承転結を意識し、

どこを強調するか、などを考えながら話すと思います。

演奏は、スピーチのように、強調したいところや抑揚をつけたいところ

を表現していく、という点では、共通するものがあると思っています。

(強弱をつけたり、ゆったり歌いたい、少し早めにしたい、などは、

スピーチよりも音楽の方が変化があるかもしれませんが。)


なので私はよく、フレーズを文章に例えます。

フレーズの中には、終わりのように見えるけれど、まだ次に続いている

場合もある。

それが「、」に当たり、本当に終わるところは、「。」に当たる、

などです。

そして、一旦ここで終わりかな、というのが、「段落」ととらえて

います。


曲も、文章と同じように起承転結があり、楽譜をよく見ていくと、

中間部が盛り上がって、その後また初めと同じフレーズが出てきて

終わっているな、とか、曲の構成にある程度パターンがある場合が多い

というのが分かってくると思います。

そうしたら、一番盛り上がるクライマックスは感情をマックスにして

弾きたいので、そこまでは、少し控えめに始めて、クライマックスに

向かうように歌った方が、クライマックスが生きるな、など、

変化や方向性がはっきりします。


もし、最後が初めと同じようでも、少しピアノ伴奏の和声が違うこと

などがあったり、同じフレーズであっても、最初にあるのか

最後にあるのかでも、音の意味が違ってくるので、

その違いを音にできるように、歌う時から意識します。


また、時代によって、当時の楽器のつくりや流行などが影響していて、

バッハやモーツァルトをロマン派のように弾くと何だかしっくりこない、

など様式感の違いがあるので、そのようなルールなど気を付けながら、

歌います。

(この様式感の違いや、その曲に対しての知識・教養などは、

知っていれば知っているほど、説得力のある表現につながります)


そうやって分析し、フレーズを歌う時に、一つ一つの音をどういう音で

表す(歌う)のか、ちゃんとイメージができていけば、あとはその音を

楽器で出すだけです。

その時に、ある程度テクニックがないと、なかなか思い通りの音を

出すのが難しい。

自分が出したい音を出すためには、弓や指が繊細にコントロール

できなくてはならないので、その技術を習得することが、

本当の練習の目的かなと思っています。


また、楽器だと、歌よりも複雑なことができてしまい、それを自分が

歌っているかのように弾く、というのが難しい。

自分が出している音が、出したい音と一致しているか、よく聴くことも

大事です。


人によって、曲のとらえ方や仕上げ方は千差万別で、これが絶対というわけ

ではないと思いますが、私の場合は、練習してその曲の全ての音を

自分が歌っているように、通して弾けるようになり、

その時思い描いている音と一致したと思えた時、

「あがり」から解放されます。


逆に、そこまで行けないとあがってしまうことが分かっているので、

練習してそこまで行けるよう、努力します。


文章にすると、何だか大変なことをやっているように聞こえてしまうかも

しれませんが、実際には直感でやっていることも多いです。

あまり難しく考えず、まずは歌って不自然でなければよし、という軽い

感じで始めてみて、後は練習しながら、少しずつ良くしていけばとも

思います。完璧を求めすぎても、辛いので。


少しでも、曲を仕上げる時の参考になれば嬉しいです。









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